見る前に情報をあまり入れずに、SNSでの評判となった、「あの〇バアがヤバイ!」とか、特徴的なポスターだけを見て視聴に臨みました。ほとんど情報を入れてなかったので、まさかあのジュリア・ガーナーさんが出演していたのは驚きでした。彼女、どっちかというと真面目な映画に出ているイメージがあったので。とは言っても「アシスタント」と「ロイヤルホテル」しか見ていないからそうおもったんでしょうけども。
で、筋立てとしては、アメリカのとある小さな町で、17人の小学生が深夜の2時17分に同時に家を飛び出していなくなる。その17人は教師のジャスティン・ギャンディ(ジュリア・ガーナー)が担任だったので、保護者から責任を問われるという、キャンディ的には理不尽な目に遭い、自分の車には「Witch(魔女め)」と落書きされる。
この冒頭で私はてっきり彼女が主人公で、この失踪事件の謎を追っていくのかと思いきや、話の転がり方が違った。彼女は生徒に対する距離がおかしいと校長から忠告されていて、帰りに酒を購入して飲んだくれていたりする。
元彼で今は警官のポール・モーガン(オールデン・エアエンライク)を誘惑して一緒に飲み、一夜を共にするがポールは妻帯者で、しかもアルコール依存症から抜け出そうとしていたのをキャンディが台無しにしてしまう。
ここらへんで主人公が誰かわからなくなり、私の頭には「?」が浮かぶ。キャンディもポールも人として問題あるし、この状況を収拾させることは出来なさそう。
で、今度は何故か失踪した子供の親アーチャー・グラフ(ジョシュ・ブローリン)の視点から物語が始まりまたもや「?」。と思ったら、今度はポール、次は薬中のホームレスのジェームズ (オースティン・エイブラムス)に視点が移る。
ここまで来てようやくわかったのは、ひとつの事件を多視点で描くことで、観客だけがこの事件の全貌をわかるという構造になっている。
映画が中盤を過ぎるまで、実は主人公がまだ出てはいるけどクローズアップはされない。ようやっと後半になって誰が主人公なのか明かされる。主人公は17人が失踪したなか、その教室の唯一残ったアレックス・リリー( キャリー・クリストファー)であることがわかってくる。
SNSで話題に挙がっていた「〇バア」ことグラディス (エイミー・マディガン)によって、アレックスの両親は家と自分自身を「乗っ取られ」、アレックスはヤングケアラーみたいに両親と失踪した子供たちの世話をさせられていたのだった!グラディスは、東欧の魔女っぽい魔術を行使してアレックスの両親や子供たちから何かを吸い取っているのだと思う。魔女と罵られていたキャンディではなく、本物の魔女がここにいたというオチ。
ここでアメリカの脚本のお約束がようやっと示され、彼が「共感の出来るキャラクター」であり、「追い詰められている」のがわかってくる。なにせグラディスに強制されて共にどこかへバッくれられそうになってますからね。
もちろん終盤彼は「殻を破る」。このままこの状況から逃れられないのではないかという思い込みを外す為に「反転攻勢する」。そう、ここまで話が進んで来て大人がまったくと言っていいほど役に立たないんですよこの作品!
子供の模範となるべき教師のキャンディはアル中でNTRまでするし、警官のポールはキャンディの誘惑に負け、断酒を破り酒をのみ性的関係を結び、泥棒に入ろうとしたジェームズを捕まえるまでは良かったのだが、ふとした拍子に暴行を働き、車載カメラに録画されたのがバレないか戦々恐々とする。
「まともな大人の不在」が、どっちかというとテーマなのかなとは思いました。それと、実際にあった事件を物語にすることである種の鎮魂になっているのかなと、情報をあえて収集しないで視聴に臨んだ感想です。
帰宅後grokに、この映画は実際の事件を元にしたのかと聞いてみたけど、それは違ったみたい。以下はその質問の答えの引用。
映画「Weapons」(原題同じ、2025年公開のザック・クレッガー監督作品)は、**特定の現実の事件を基にした実話ベースの作品ではありません**。物語の中心である「同じクラスの子どもたちが一斉に深夜に家を出て失踪する」という出来事は、完全にフィクションです。
ただし、監督のザック・クレッガーはインタビューで本作を「非常に個人的な映画」と述べており、以下の影響を受けていると明かしています:
- 親友の突然の死(喪失と悲嘆の感情を処理するための執筆だった)。
- 自身の幼少期の経験(一部のキャラクターのエピソードが自伝的要素を含む)。
- 子どもたちの失踪というテーマは、一般的な「子ども行方不明事件」の恐怖や、社会的なトラウマ(例: 集団的な喪失感やコミュニティの分裂)を着想源にしている。また、物語の構造はポール・トーマス・アンダーソンの『マグノリア』やドゥニ・ヴィルヌーヴの『プリズナーズ』からインスピレーションを得ており、超自然的な要素を交えつつ、人間関係の崩壊や依存症、コミュニティの闇を描いています。
映画の冒頭で「これは実話だ」と語られるナレーションがありますが、これは意図的なミスリードで、都市伝説風のホラー演出の一環です。実際のレビューや記事でも、明確にフィクションであると指摘されています。
要するに、現実に起きた特定の事件を元にしたものではなく、監督の個人的な感情と一般的な社会的不安を基にしたオリジナルストーリーです。
引用終わり。