漫画「ヘルタースケルター」

 岡崎京子先生の作品は「pink」に続いてこれで2作目。

 

 主人公は血の繋がってない「ママ」に見いだされ、芸能界を舞台にフランケンシュタインの美容整形版みたいな物語が展開していく。

 

 「美」と「若さ」に憑りつかれ、加齢と共にそれが失われていく恐怖で次第におかしくなっていく主人公。

 

 彼女は当初その美と若さで芸能界の頂点に君臨するも、その美と若さが衰えれば「アレ(取替可能な存在)」と呼ばれて使い捨てられ、忘れ去られてしまうのを重々承知しているからこそますます美と若さに執着して整形にいそしむ。「アシカノ」でも描かれているように、醜形恐怖症でもあるようです。

 

 作中のとあるキャラクターがつぶやく印象的な台詞で

「やせ我慢ではなく、ぼくは年をとるということはすばらしいと思う。それこそ新しい経験さ」

というのがあるのですが、この、若さと美しさ(ルッキズム)に最大の価値を置いてしまっている我らが高度資本主義社会においては誰も聞く耳を持たないでしょうね。

 

 そして、老いに怯える主人公を描いたこの漫画が今読み返してもまったく「古びていない」という皮肉。95年に発表されたのに。つまり問題は何も変わっていなくてそのまんまってこと。そう、これはホラー漫画なんだと気づかされます。