【ネタバレ感想】映画『雪風 YUKIKAZE』ひどすぎる!令和価値観の押し付けとラストの第四の壁破りが最悪

 ※この記事はネタバレありです!

 

 人に勧められて本作を見たのですが、その人が勧める時に若干失笑ぎみだったので悪い予感というか、だいだい予想はしていましたがまあひどかったです。私は戦争には反対ですが、こんな映画では反戦映画としては機能していないと言っていいと思います。

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雪風 YUKIKAZE

雪風 YUKIKAZE

  • 竹野内豊
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 大まかな内容としては、太平洋戦争の中を生き抜いた駆逐艦「雪風」の乗組員達を描いています。

 

 もちろんみなさんご存じのとおり、日本は太平洋戦争に「突入していしまい」ボロクソに敗けたんですけど、本作はその展開自体はサイドプロットみたいなもので、雪風の乗組員がその中で生き抜いていくという展開に軸が置かれている。

 

 いるんだけど、登場人物のメンタリティが明らかに令和の日本人のそれなので、良くも悪くも昭和の大日本帝国軍人にはとても見えなかったりします。

 

 戦争が進行していくのは地図を使ったナレーションでざっくりと説明があり、この作品は邦画だけど、アメリカ映画と同様主人公たちは追い詰められていくシチュエーションとして機能させている。

 

 で、中盤あたりでレイテ沖海戦におけるいわゆる「栗田ターン」が出て来るんだけど、当時の人たちはこれを「逃げた」「小心者」と批判されているが、今作においては残った者の命を守るための行為に見えるんですよ。

 

 ここが恐ろしいのは、時代によってこの行為がよきことにも怯懦(臆病)にも解釈されてしまうところだったりする。後世の人から見れば命を守る行動に写るのだけれど、当時の人にはかなり許容出来ない行為な訳だ。

 

 反転しようがしまいが、実は大勢にはまったく影響が無くて、「あの時ああしておけば」みたいなことはまったく意味が無い。日本が戦争に突入してしまった時点で先の大戦は敗けが確定していて、実は当時シミュレーションも行われているんですよ。「総力戦研究所」という組織によって現実の世界でどういう展開になるのか、正確に予測されていた。

 ここで、日本人の弱点である「空気に抗えない」が出て来る。山本七平の「『空気』の研究」にもある様に、日本人は意思決定の場において多数を占めると、同調圧力に抗えなかったりする。そこに、理論理性による合理的判断(要するに損得勘定)が加わり、戦争に反対することが出来なくなった結果、敗けが確定している戦争に「突入してしまった」のが真相と言うしかなかったりします。良くも悪くもこれが日本人の特徴であり弱点。

 完全に本作の内容と話が脱線しましたが、本作に話を戻すと、この話のゴールは「この戦争を生き抜くこと」だったりする。でも、それはあくまでも令和の日本人視点でしかないのでとても白々しいというか、「後出しじゃんけん」でしかなかったりする。後の世の人が言えることばっかり出て来て、そういうのやめようよとしか言いようがないといいましょうか。

 

 最後のシーンもわざとらしくて、生き残った雪風の乗組員達が画面のこちら側、要するに観客たちに向かって「ずっと見ているぞ~」と、いわゆる「第四の壁」を破るメタセリフを「言わせている」ところなんかもうサブいぼがゾゾゾと湧いてきて、とどめとばかりにエンディングテーマ「手紙(曲名がさぁ…)」が流れて来るところで、ダメな意味で「お腹いっぱい」でした。以下、リアリティに欠ける本作の描写を列挙します。

  • 鉄拳制裁による体罰が無い
  • あまりにも現代的な、「命を最優先する価値観」
  • 髪形がおかしい、丸坊主がデフォルトでしょうそこは!
  • ゴア描写がヌルい!早瀬先任伍長が射殺されるシーンはもっと惨たらしくするべき!
  • セリフ回し、敬礼の仕方等の所作がおかしい!

等々、挙げだしたらキリが無いほどツッコミどころは満載で、登場人物が真面目な顔で演技すればするほど本作の薄っぺらさが浮き彫りになるという皮肉な構造になってしまっている。

 

 それとさ、後日談みたい1970年の大阪万博を写して、「日本は平和になりました」って描写をするんだけど、大阪万博の「太陽の塔」って「中身は空洞」なんですよね。この中身が空洞というのが非常に象徴的になっていて、高度経済成長期真っただ中だけど、この年に三島由紀夫は割腹自殺していたりする。日本がこれから先どうなっていくのか、彼は頭がいいから分かっていて、そして彼はそれを見るのが耐えがたいから自ら命を絶ったという側面は否定できないと思います。今の世の中を見れば。