※注意!この記事はネタバレを多いに含みます!
かなりいい歳こいたおっさんが、冷凍睡眠して500年後の氷河期に突入した地球で甦る、ある種「異世界転生」みたいな本作。
目覚めた主人公の太郎は、一度自害して果てようとしたところを思い直し、イラクの港湾都市バスラから日本へと旅することを決意する。その過程で、太郎と途中で旅の仲間になる、「高貴なる野蛮人」パルと一緒に人類文明が発展するダイジェストを読者に疑似体験させるというのが本作のキモ。
前の巻で医師の経験があるリコを伴い、旅の最終目的地である九州まで出発するところで終わりました。
で、陸路は前の村のエピソードでも紹介されているように、基本旅人には警戒されるし最悪弓で射殺されそうになる危険もあるのでヨットによるう海路で旅している太郎一行。
ここでパルが船酔いするシーンがあって、あのマチズモの化身みたいなあいつが?みたいな感じになります。太郎の思惑としては、旅する途中でヒューマの船を見つけ、そこに交渉して乗り込み、一気にヒューマへと到着しようという算段。
が、そこにマリョウ編で殺してしまったブシフの息子ブシフジュニア(安直なネーミング)が船に乗っているからさあ大変!みたいな展開になります。彼はヒューマでは「二級国民」扱いされ、コーヒーに入れる砂糖の量まで制限されていて、ヒューマが格差社会になっていることが示される。さらに、ヒューマの中心部へ近づくに連れ、ヒューマ国の連中が持っている武装が我々現代人レベルまで到達している。なにせスタンガン(感電防止のゴムスーツまで着用している!)はおろかなんとAK47(カラシニコフ)まで所有している!
ヒューマの船(電機駆動)になんとか乗り込むんだけど、交渉材料を旅の途中で失ってしまい、紙のマー(この世界の通貨)の発行権の証書を盾にして交渉というか、ほとんど口車みたいに丸め込んで相手を納得させてしまうところも、現代人である太郎の、暴力だけではない「知力」を巧みに使い、それが通用するのも現代に近づいているから。
はぐれたパルも船に着き、女医の機転もあり太郎達は船の乗っ取りに成功する。ここの展開だけど、登場人物が全員必死でそれ故物語の推進力も上がるし、今巻でのスペクタクルな部分です。山田芳裕先生がキャラクターに汗をかかせる時って、本当に脱水症状起こすのではないかという量の汗を流させるんですよね。
私がご都合主義的な展開が増えたのでは?と思った箇所があって、それはマリョウ編で退場したハッタがなんと再登場するところなんですよ!
まあ、彼が言うにはマリョウは善意の思考停止をした国母プリがすべてを取り仕切り、ありとあらゆるものを国営化。売春も賭博も禁止したので、「心に遊びがなくなった」からハッタはマリョウを出国せざるを得なくなった。彼は、人の営みにおける「享楽」の代弁者みたいな存在だから仕方がないんだけど、それにくわえて石油王のロックがマリョウから分裂して独立国「コール」を築き、通貨もマーではなく油を担保とした「ロック(自分の名前を通貨に!)」なるものを設ける。そしてマリョウとは一線を引くみたいになる。分断の始まりですね。
ハッタはそちらにも行きたくないので、太郎の後を追い、ついに追いついた次第。ここらへんちょっと「教科書通り」みたいなテイストがしなくもない。
で、ヒューマへなんと今度は「蒸気機関車」で行くことになる。どうもヒューマのエネルギー源は電気と石炭みたいだけど、電気は貴重らしいとか、無線が使えるとか、セラミックまであったり、いったい中心部に着いたらどういうことになっているのだろうという興味ががぜん沸いて来る。この、「ヒューマっていったいどういう国なんだろう?」という疑問がもうひとつこの作品の推進力となっている。
次巻へのヒキだけど、いままで何回か登場して来た「巨大パンダ」や「巨大ヘラジカ」に加えて、脚だけしか見えないけど猪っぽい何かがブシフジュニアを踏み殺したところで終わる。
私の予想だけど、単行本派なのですが、あと2巻くらいで完結するのではないかというか、完結して欲しいなと思ったり。金と暴力の陰惨さは、マリョウ編で象徴させていると思っているので、後はその先をどう描いてくれるのかだと思っています。