ヨルゴス・ランティモス監督のシュールなダークコメディです。
私がこの映画を見ることになった理由ですが、来年から日本で「独身税」なるものが導入されるらしいとのことだからです。
来年4月から始まる「独身税」こと「子ども・子育て支援金制度」。一人あたりの徴収料はいくら?(ファイナンシャルフィールド) - Yahoo!ニュース
まあ正確には今以上に重税が課されるという話ですけど、会社勤めをしている方ならお分かりでしょうが、ただでさえ高い社会保険料がさらに値上がりするので、この先やっていけるのかどうか心配です。
で、本作の内容ですが、ディストピアものっぽい世界みたいで、独身者がホテルに閉じ込められ、45日以内にパートナーを見つけないとなんと動物にされてしまうという、非常にシュールな設定となっています。
ディストピアものといっても監督がいわんとしている意図は明白で、要するにこれは体制による婚姻の強要を意味しているのだと分かる。独り身でいることを許さない社会、つまり現代社会における独り身であることのプレッシャーを表現している。
パートナーが見つからないと動物に変えられてしまうのは、おそらく周辺化されることのメタファーだと思います。結婚しない独身者は「人間以外の存在と見なされる」訳だ。
そして主人公の男はそこから逃げ出すのだけれど、逃亡先で今度は脱走してきた独身者のグループに出会う。今度は今度で独り身であることを強要され、恋愛や性行為は禁止だったりする。罠に引っかかって負傷した物を見捨てるのは「自己責任」で片付かれれる包摂性の無さの表れ。
要するに、監督には現在の近代文明社会がこう見えているのだと言っている。ギリシャ人である監督からしてこれほど不自由に見えるのだから、日本人からしたらもっと不自由に見えるんでしょうけど、邦画で似たような作品にはお目にかかったことが無いかな。
恋愛を禁じられていたところに主人公はある視力の弱い女性と恋に落ち、逃亡を図るのだが、彼女は独身者グループのリーダーによって失明させられ、主人公は試されることになる。ヨーロッパの映像作品において、森は危険で予測不能な場所であると同時に、試練の場所でもあるから。そしてラスト、彼の勇気のある痛々しい決断によって恋愛はある意味成就される。
私が教養が無いせいか、こういった抽象的でハイブロウな作品になると理解が難しいです。こういったときいつも「もっと勉強しておけばなー」って思っちゃいます。