映画「タクシー運転手 約束は海を越えて」

 びっくりするほどの傑作でした。

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 筋立てとしては、シングルファーザーのタクシー運転手マンソプ(ソン・ガンホ)が、家賃を払う金を稼ぐ為にとある外国人を乗せ、光州市に向かうのだが…というのがあらまし。

 

 主人公のマンソプだけど、物語の序盤では政府に抗議をする学生達を見ても快く思わず、むしろ働きもしてないくせに勉強そっちのけで何をやっているのだと感じている。それにしてもソン・ガンホってこういう「学が無い悪気のない一般のおっさん」役をやらせたらハマりますね!

 

 で、そこにドイツ人記者ピーターが出て来て、彼がある事態を追っているのが示される。彼が光州に行きたいと思っていて、それを目ざとく嗅ぎつけたマンソプがピーターを乗せ光州に行くことに。

 

 ピーターのプロフィールはあまり明かされず、光州へ行く道中マンソプのプロフィールが明かされ、彼が過去にアフガニスタンに出稼ぎに行っていることや、少しだけ英語が話せたりするのが分かる。

 

 光州に着き、何やら様子がおかしいことに気づき、やばいところに来てしまった感が観客にも共有される。本場韓国の人が見たら、これから起こることはわかるのだけれども、他の国の人はマンソプの視点で映画を見ているので、この話の運びは上手い。

 

 そして中盤にさしかかろうかという時間帯で事件発生。ここでもまだマンソプ=観客なので、マンソプはここから一刻も早く逃げ出そうとするけど、タクシーの乗客(家賃のお金を持っている)ピーターは現場に可能な限り接近して撮影する。

 

 なんとかこの状況を脱するも、マンソプとピーターはいがみ合う。でも、そのおかげで二人の絆は深まる(フード理論もがっつり出て来ます!)。

 

 それでもマンソプとしては光州から早く逃げ出したい。途中捕まって軍警官から暴行を受け、ある意味で当事者になるならなおさらで、彼はピーターを置いていったんは逃げ出す。ここで彼は試され、「殻を破る」。光州へ戻り、今度はピーターを無事に空港まで送り届けるというミッションが終盤になる。

 

 この終盤のカーチェイスシーンが良くて、光州にいる地元のタクシー運転手達がマンソプを助けてくれる熱い展開になる!

 

 途中の検問で、軍人のひとりがマンソプを見逃すのだけれど、ここらへんは要するに時の全斗煥政権に必ずしも軍人全員が支持しているわけではなく、心ある者もいたのでしょう。

 

 見ていてこちらが2つの点で恥ずかしくなって来ました。現実の政治問題を扱った映画がエンタメになり得るのだというのをまざまざと証明して見せていて、日本の実写で最近やっている人いる?いないでしょう。20年くらい前に「攻殻機動隊」のテレビアニメ版でしか見てないよ。

 

 もうひとつ恥ずかしいのは、最近ネトフリで配信されている「新幹線大爆破」のリメイク版が、モロにJR忖度映画になってしまっているのがとても恥ずかしい!元の映画の精神を踏みにじる卑しくさもしい作品でした。だから日本のオタクって駄目なんだと思う。庵野秀明もお上におもねる様な作風だし…