映画「アノーラ」

 内容を大雑把に説明すると、「セックスワーカーの主人公が、他人をあてにして経済的に浮揚しようとするが、その目論見は外れる」といったもので、それは監督の前作「レッド・ロケット」とおんなじだったりする。

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 違う点としては、「レッド・ロケット」の主人公が男性だったのに対して、「アノーラ」の主人公は女性なので、境遇がよくない点。ストリップダンサーとして働いてはいるけれど、福利厚生のない職場で、ボロアパートに共同で暮らしている。

 

 そんなところから抜け出そうと、彼女はオリガルヒの息子で客のヴァーニャに目を付けるも…といった展開になる。序盤はヴァーニャの期間限定の恋人になり、その後ふたりは結婚する。中盤にさしかかり、馬鹿息子ヴァーニャの結婚を失効させようと、オリガルヒの手の者が差し向けられるんだけど、このシーンが映画の中でいちばん面白い。

 

 そして終盤、彼女の「成り上がり」の思惑は外れる。でも、彼女は最後になって結婚が失効になってよかったと気づく。ゲームしてヤクをキメ、クラブで踊り狂っているだけで中身の無いヴァーニャに愛想をつかす訳だ。

 

 最後、ヴァーニャを捜索するあいだに不思議な絆が生まれたイゴールが、いい奴だとわかるんだけど、そこでもアノーラがまだ持っている「王子様幻想」が打ち砕かれる。

 

 「他人をあてにしても幸せにはなれない」という、実は教訓劇だったのがわかる。まあでも、これがそんなにいろんな賞を受賞する理由はいまいちわかりませんね。つまらなくはないけれど、それほど面白くも無い様な気がしてなりませんでした。社会的弱者に光をあてる「レプリゼンテーション」てことなのかな?